MP3の思い出 by ミキロフ
この度は"MP300(エムピースリーハンドレッド、なんてゴージャスなタイトルの響きなんでしょう)"の発売、本当におめでとうございます。私がリョウアライさんのHPで初めてMP3の配信をダウンロードして聴いたのは今から13年前の1999年初頭。前年の98年、友人であるmatsu&takeから「Web_Site_Again(当時のアライさんのHP名)のMP3コーナーが面白い」という情報を吹き込まれながらも、まだ自宅にネット環境の無かった私は松竹家のMacでしばらくの間指をくわえつつ聴かせてもらいに行く日々が続きました。ちなみにその頃アライさんとは面識はなく、所有していたフロッグマンレコーズのコンピレーションCDで名前を認知していた。その後99年の明けに発売された(今や懐かしい...)5色バリエーションになったばかりのiMacG3 266MHzを思いきって購入、ネット開通後最初にアクセスしたサイトがアライさんのHPだったのを、今これを書きながら思い出しました。
人生初のダウンロード行為もどこぞのエロ画像などではなく、Web_Site_AgainのMP3ファイル(これ本当です)だったなぁ。
当時はMP3フォーマットを用いてオリジナル曲の配信をしていること自体が、今では考えられないですけどとても革新的だったんです。MP3という圧縮形式も確か出始めの頃で、海外の一部の音楽マニアが趣味でやってるようなページで稀にオススメ曲紹介用にMP3でサンプルを置いていたりしたのを見かけましたが、国内アーティストのHPで自作曲のフル配信(しかも無料で)をやってる人は極少数だったと記憶しています。それは思うにいわゆるテレホーダイタイムの時代、ネット接続がダイヤルアップか僅かに速いISDNくらいしか無かったので、なかなか物理的にも成立しなかったことなのかもしれません。
アライさんMP3コーナーの全盛期は配信開始当初から2000年いっぱい辺りまでがアップロードのペースを見てもほぼ週1で2曲(!)ずつ、私含め落とす側もうっかりしてると更新チェックをする前に次の更新になっていたりするので(サーバー容量の制限で新曲アップの際、過去曲は削除されていた)その頃はかなりマメにHPを訪れては更新お知らせのNEW!文字の有無を確認していました。大体いつも金曜の夜更新だったので、金曜日は朝日放送の探偵!ナイトスクープ(関西圏での放送日)を観た後にネット開いてアライさんのMP3更新チェック!の曜日として数年間自分の中だけで定着。言い過ぎかもしれませんがWebSiteAgainでのMP3コーナーの存在が完全に生活の一端として密着するほど更新を追いかけていたんです。毎週、若干数百KBのファイル一つ落とすのにプロバイダの調子が悪いときは10~20分かかった苦心のダウンロードも今となっては良い思い出として残っていますね(という経緯/経験もあり、06年の200曲再アップや09年の100曲再アップ時は少し嫉妬しました!)。
アライさんブログのMP3リスト 01/07/07に'adsl'という曲があり、この前後から1曲毎の容量がちょっと増えていきますが、当時の私が送った感想メールに対してアライさん曰く「ADSLに乗り換えました。なのでアップロード容量も必然的に増え、曲名も記念に'adsl'」
というような明解な内容の返信があったことを今でも覚えています。未だダイヤルアップでダウンロードを頑張っていた身としてはこの辺で初めてのピンチを感じました(落とせないこともなかったのですが時間がかかり過ぎた)。時期を見て私もけっきょく電話回線から高速回線に乗り換えたのは言うまでもありません。メールの話で補足しますと、初めてダウンロードさせていただいた頃からなんとなく毎回感想メールをアライさんに送り続けていましたが、例えどんな些細な感想であってもいつも即(本当に速かった)長文で丁寧に説明や解説の返信をいただいていました。あの時期のMP3に関してやり取りしていたメールのデータはもう見失いましたが、もしあってしっかり編集を施せばなかなか痒いところに手のとどくリョウアライMP3解剖本が作れたと思います。当時HPにはBBSを設置されていて(何か更新がある度にコロコロ入れ替わるトップ画像にBBSへのリンクが埋め込まれた仕様だった。ので、たまに画像が小さ過ぎるとBBSの入口が分からなくなることもあった)感想などはそちらに書き込んだこともありました。
そんなこんなありつつでMP3をきっかけにアライさんとのメールやネット上での交流が次第に深まり、99年夏には私や松竹・ヤベミルクらで京都にて行っていたクラブのイベントにゲストで出ていただき、それまでアップされていたMP3トラックを軸にしたCDJプレイ(アライさんご自身としても初の試みでした)をしていただくまで展開していったわけです。私にとってアライさんHPのMP3コーナーはインターネット経験の原点でもあり、青春そのものと言っても過言ではありません(しみじみ)。"MP300"、その規格外のボリュームは勿論のこと、理屈抜きで面白い盤だと思いますので、少しでもたくさんの音楽好きの方に是非聴いていただきたいです。
mikirov's favorite 10 files(全てMP300に収録)
ggg
シンプルなドラムループ一本勝負。こういった何気ない小品こそMP3シリーズの醍醐味です。過去にイルリメが気に入りヒップホップのイベントでライヴのバックトラックに使用していました。
sq4ch
初期の頃のアップロード曲にしてMP3シリーズのギャグものの中ではダントツに素晴らしく、以後この空気感を超えるものはなかなか出てこなかった。前フリがありその後オチがある類いの分かりやすい笑いではないのですが、なんとも言えない珍妙な可笑しみがあります。ネタの秀逸さは勿論、エディットにわび・さびの心をも感じとることができる。冒頭の三本締めから「地球はひとつ」のセリフまでは、いつ頃かの京都クラブメトロでのライヴでプレイされました。
jbfoe
これから'stoic'への流れは当時のライヴの定番でした。アップロード時もこの2曲は1セットだった。
raw
こちらもライヴの定番。恐らくアライさん本人もお気に入りのトラック(?)で度々プレイされました。当時私どもが開催していたイベントがエレクトロをメインに据えた内容だった為、このようなタイプの曲の選曲が自然と多くなっていったものと思われます。
regards
過去にMP3に関してメールのやり取りをしている際、アライさん曰く「僕のMP3はネタに依存するところが大きい。譜面化したらきっと全部同じようなものになります(笑)」というものがあったことを覚えていますが、この曲なんかわりとその話の意味が理解できる元ネタをサンプラーで裁断してリアルタイムで打ち込んでいく制作手法のバリエーションの一つかと。アップロード時期(99/09/26)にしては珍しく長尺で聴きごたえがあります。
cycle
野蛮なブレイクビーツに飛び交うラジオのチューニングノイズや無造作なスクラッチの音だけで終始アッパーに展開していくトラック。これや'koitsu'などはライヴでのトドメの1曲としてヘビロされました。余談ですがネットをやり始めた頃、アライさんのMP3ファイルの音量/音圧が自分の中で知らず知らずのうちにデフォルトになっていたので、他から拾ってきたMP3の音量が何か物足りなく感じる病にしばらくかかったりしたこともありました。
system
僭越ですが私も販売に関わっていたミックステープ"Extended-Edit-Style"に繋がる発端となった思い入れのあるファイルです。SoundEdit16が駆使された愛情豊かな(笑)エディットもの。
mantle
とあるイタリア映画音楽家の曲のサンプルが使用されている緩やかなダウンビートものです。当時よくアライさんとラウンジ/モンド辺りの再発関連の情報交換や音源の貸し借りなどをしていた覚えがあり、その音源交換用のメディアは最初確かMDだったことにもはや今時代を感じる(遠い目)。
dido
日本の歌謡界を代表する作曲家のある貴重な音源がネタに使用されています。後半のストイックなノリが好き。これは私がアライさんに貸した音源を気がつけばネタにされてMP3でアップされていたという、思い出込みでのセレクトです(笑)。
brisk
02年に突如大量アップされた連作からの1曲。元ネタをサンプラーで裁断してリアルタイムで打ち込んでいくパターンのエディット(またはリミックス!?)もの。原型をまったくとどめていませんが、聴く人が聴けば誰の曲を使われているかすぐ分かるでしょう(笑)。このシリーズ全部カッコよくて好きなのですが、あえてその中よりテンションやサンプルの鳴りが気分なこれを選んでみました。アップ時の同年には渋谷OnAirNestでのライヴでシリーズ全作がプレイされることに。
MIKIROV(ミキロフ)
大阪出身大阪在住。90年代末より
SPOTLIGHTrecordsを拠点にしおもにDJを務める。04年から07年までのRiowArai主催イベント
ModeDownにレギュラー出演他。ブログ>>>
朝日町の車窓から
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new disc "MP300" release!!!