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リョウ・アライ----ブレイクビーツ・マエストロと称されるそのストイックな作風からは伝わりづらいアライさんの音楽的嗜好を知ることのできる"Recommends"も97年から数えて10年経ちました。今回は過去10年間にとりあげられた数々の作品を年代順に振り返り、詳しく掘り下げて解説して頂きました。
10年分のリストを時間軸で追っていくなかで見えてきた数々の発見----複数回登場する意外な(!)お気に入りアーティスト、四つ打ち全盛のクラブシーンの中でのブレイクビーツについてのこだわり、渋谷系/サバービアへの目配せ、SP1200使いへのシンパシー、アライB-BOY時代の幕開け、トレンディなビートパターンへのいち早い接近、女性ボーカルものへのこだわりはRATNへの序章?、グレート・コンポーザー/ライブラリーシリーズ、クリック・エレクトロニカへの盛り上がり(と盛り下がり)、再発と新譜の微妙なバランス、後のDJMJのルーツともいえるディスコ・リバイバルの波----
そして、オールタイム・フェイバリット(または無人島レコード)として上げられた3組のアーティストにはすべてのレコメンに通じるリョウ・アライの音楽的ルーツが!?
8時間にも渡る対談の中で果たして400枚を越えるレコメンの中で今でもアライさんが聴きたい一枚はどれなのか? じっくりお付き合いください。なお、対談のお相手はわたくしteezeeがつとめさせて頂きます。
プロフィール----teezee ...会社員/モードダウナー/LIQUID LIQUID LIQUID。
ModeDownではエレクトロハウス的なものを中心にPLAYしてますが、ブレイクビーツ全般/ある種のヒップホップ/女性ボーカル物フェチでもあります。今年はトリップホップに注目しています。
teezee(以下、T)「まずレコメンを一番最初にupしたのが97年の3月、それでHPが始まったっていうのは?」
RiowArai(以下、R)「2月ですね」
T「じゃHPが始まる時にはこのレコメンが... 」
R「レイアウトは今と違うけど。最初HPを始めた時にアルバムもまだ1枚しか出してないから載せる情報がそれしかないし、他にやることっていったら日記と」
T「BBSみたいな。97年位ってアーティストが自分のHPを作ってるっていうのは多かったですか? まだそんなにいないような気もしますけど」
R「アルバム出してる人自体も今ほど多くなかった時期だし、インターネットも誰しもがやってたっていうわけでもないし」
T「もうちょっと2000年に近づいていく位の方が、そうやってアーティストが自分でページ持ったりっていうのが普及してきたような感じがありますよね」
R「最初の動機としてはコンテンツを増やしたいということで、元々DJじゃないからDJチャートっていうわけでもなくて、一応レコメンってことで始めて」
T「それで更新の周期をみてると大体年に3回か4回ですよね」
R「最初は季節毎というか年4回ペースと決めてて、それが続くんだけど、最近はしんどくなって3回にしてるけど」
T「リアルタイムで聴いてる新譜ものを載せようっていう意識はあるんですか?」
R「一応そうだね」
T「10年分を見てた時に新譜が多い時期と再発が多い時期とあるんですよね。この時期はきっと新譜がつまんなかったのかなとか(笑)」
R「それでレコメンの最初の頃はコメントをもっと書いてた」
T「もっと解説っぽいことを?」
R「もっとレビュー気取りっていうか、他では今でもそういうページは多いけど。当初は最低5行位は書いてたよね。今は1行コメントっていうことになってるんだけど」
T「大体盤を選んでる時点で語る作業は終わってるっていうような」
R「コメントはホントは書かなくてもいいと思うんだけど、ただ盤だけ挙げてると見る方がつまらないかなと思ってコメントを書いてるんだけど」
T「あとずっと見ていくとレコメンの度合いじゃないですけど、さらっと聴いてるものもあれば深く聴いてるものもあるんだろうなと、コメントの内容でわかるんですよね。それでレビューだと点数をつけるっていうのがよくありますけど、ここでは点数をつけていこうってことじゃないですよね? それぞれ歴史的名盤になってるところもあれば、そんなにその後の歴史で取り上げられてないものとか」
R「基本的には自分はこういうのを聴いてますよってことなんで。ホントはコレメンというよりかは、買いましたよ聴きましたよ聴いてますよとか、そういうニュアンスだよね。オススメかどうかはどうでもよくて」
T「そういう感じを報告するというか。逆にアライさんが人のHPを見てたりとか記事で今年のベストテンみたいな、そういうのを見るのは結構好きですか? 他のミュージシャンのHPとか、この人こんなの聴いてるんだとか」
R「その人がDJやってるやってない抜きにして他人のHPを見てこれ面白そうだなっていうのは当然ある。最近は雑誌見てこれ買おうとかは思わないで、ネットで見てというパターンが多い。あと初期の頃は店頭で目についたら買うとか」
T「それで97年の3月というのは"Again"と"circuit'72"のちょうど間くらいの時期ですよね。その時の感覚からするとテクノからブレイクビーツに移行してる期間かなと。レコメンの内容を見てるとそういうムードが入ってるものがだいぶ見られるかなという。90年代前半にテクノとかHipHopとかロックとかバラバラだったのが後半になると入り交じってくるものがあったかなと感じるんですよね。ここに載ってるものでこの頃の音楽ファンなら皆割と聴いてたかなというものと、そんなにここまでは聴いてないだろうっていうものもありますよね」
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T「この中で皆聴いてたなっていうものを挙げるとAphexTwinとBeck
とPortishead
...」
R「ホントはこのPortisheadの"DUMMY"はもうちょっと前なんだけどレコメン第1回ということでどうしても載せておきたかったっていう」
T「外せないな(笑) という盤なんですよね。あと逆にあんまり聴かれてないかなというところを挙げるとKarminskyのコンピとかSweetBack
。SherylCrow
っていうのが意外ですよね、このセレクションの中では。この90年代前~中半というところで世間的にはやれNirvana
とかグランジロックとか」
R「多分その辺が一通り終わって、SherylCrowを代表とする女性シンガーのシンプルなロック系というのが、この時期から出始めるんだよね」
T「AlanisMorissetteとか、そんな感じですよね」
R「そうそう、今だとFionaAppleとか?」
T「なるほど。それでSherylCrowが引っ掛かった分っていうのはどの辺なんですかね」
R「う〜ん... 何かただの普通のロックサウンドとかじゃなくて+αがあったというか。プロデューサーが誰だったか忘れたけど」
T「あとSquarepusherのこれはファーストになるんですかね、とにかく1曲目だけ聴き過ぎないように注意っていうのは1曲目だけ聴き過ぎてたってことですか?(笑)」
R「だってこの1曲目はSquarepusher'sTheme、これが大ヒットでしょ。僕も最初これで知ったわけだけど。だから一応こういうコメントになってて。Squarepusherといえばね、結局この曲なわけだし」
T「この人が特異だったのはベースプレイヤーだったっていう。その当時のクラブミュージックで自分で打ち込みもやって生楽器を持ってステージでプレイするっていうのは珍しかったんじゃないですか。フュージョン的な感覚っていうか。そういうのを打ち出してるアーティストっていなかったですよね」
R「いまだにいないかもしれないけどね。彼の場合はそういうミュージシャン魂というか、しかもフュージョン魂で、多分ほっとけばフュージョンバンドとかやりそうな奴なんだけど何故か性格が暗くて一人で追求してるところは割と共感持てる」
T「元々ルーツ的にあるとこはドラムンベースのハシリ、ジャングルみたいのを打ち込みで作ってた作品集とかもあったし、JacoPastoriusが好きなところとか見えますよね」
R「だからただのフュージョンオタクなんだけど、それで終わらずにドラムンベースにうまく融合させたっていう。ただのドラムンベースだったらAphexみたいのとあんま変わらなかったかもしれないけど、そこにプレイヤー魂みたいなのが入ったから」
T「そこが新しかったんですかね。結構これをきっかけにJacoPastoriusを聴いた人もいると思いますね」
R「僕はその前から知ってたけど」
T「僕はWeatherReportとかそういう流れで聴いたわけじゃなくて、このSquarepusherのタイミングで存在を知ったというのがあるんで、若い人にルーツ的なものを聴かせるアルバムなのかなという気がしましたね」
R「Karminskyのコンピ、これは結構聴いてたと思うよ。ピチカート系というか渋谷系
では」
T「このGentlePeopleもそうですね。Arling&Cameron
とか」
R「それは知らないなー」
T「この辺って渋谷系の流れで言うとエスカレーター系とかFPM
の初期とか。それでクラブの流れの中でも97年位だとドープな方というかKrush
じゃないですけどMo'Wax
系というかドープな方向の人もいればコレジャレた方向に行く人もいて。でもこのGentlePeopleもRephlex
から出したんですよね、それでAphexのリミックスが入ったりとか。そういった意味ではGentlePeopleもSquarepusherも繋がってるっていう(笑)」
R「一見これなんで一緒に載ってるんだよっていう話なんだけどレーベルは同じっていう。今その事実を忘れてたけど(笑)」
T「そこを繋いでるのがRichardD.Jamesっていう。あと一番聴かれてない感じがLamb
とSweetbackですかね」
R「Lambは当時ドラムンベースで何かないかなと思った中の気に入ったやつだよね。世界観はPortisheadに近い感じだね」
T「僕は97年位だとBjorkがソロになって2枚位出して結構ブレイクしてたじゃないですか」
R「この時期は"Post"だっけ?」
T「GrahamMassey(808STATE)とか、あとTricky
とかやってましたよ」
R「NellieHooperとか」
T「女性シンガーにテクノ的なトラックとかブレイクビーツを載せるのが色々出て来た時期なのかなと」
R「兎に角この時期Bjorkは流行ってたよね、今みたいに崇められる感じじゃなくて、普通に音楽好きがイイものとしてBjorkというのがあったんだけど、でも僕は好きじゃなかったんで」
T「(笑)それはなんで好きじゃなかったんですか」
R「いやー何か人間も惹かれないし、聴いても面白いと思わなかったし、歌も好きじゃないし、昔から好きな人は好きだけど僕は引っ掛かってないっていうか。逆にある意味この第1回にBjorkが」
T「この流れだと入っててもおかしくないですね。あとSweetback、これはSadeのメンバーがやってるっていう」
R「Sadeが好きだからそれの関連でってことで」
T「ボーカルのSadeAduでしたっけ? あの人じゃないボーカルが参加してっていう形で。そういった意味でプロデューサーユニットじゃないですけど、今のm-flo loves何とかみたいな(笑) のをもの凄く早くやってたっていう」
R「要するにSadeがやる気ないんで、その間に他のメンバーだけで作りたい欲求が出てきてやってしまったみたいな」
T「でも97年ってことを考えると、こういうサウンドコンセプトは早かった気がしますね」
R「でもSade自体は凄いメジャーなんだけど、これは全然話題にならなかったな」
T「ならなかったですね。僕も凄く安く中古盤で買った記憶がありますよ。割と他にないようなサウンドをやってましたよね。ベタベタのR&Bでもないし、ムチャクチャとんがったことをやってるわけじゃないんだけど、あるようでないサウンドというか」
R「Sade自体がアメリカのR&Bじゃないっていうのが凄い特徴で、拠点はイギリスなんですよ。そこがちょっと面白いところで、R&Bテイストのようでそうじゃないというところが」
T「あとはBeckの"Odelay"ですね」
R「Beckも最初出てきた時は別に好きじゃなかったんだけど」
T「このアルバムは面白かった?」
R「これは音がね」
T「これはDustBrothersとBeckが組んで作り上げたという。凄くこのアルバムっていうのは洋楽なんですけど、渋谷系の匂いを凄く感じますね(笑) その当時のムードが全部入ってるっていう」
R「旬なやつというか」
T「ロッキンオン系の人も聴いてたし、クラブで遊んでた人も聴いてたみたいなとこありますよね」
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T「新譜から追ってきますとJimiTenor、この当時のWarp
にしてみればコメントに異端児とありますけど、変わったアルバムでしたね。こういう力の抜けたというかフロアでバリバリにかかる感じじゃない路線っていうのは面白かった?」
R「もともとフロアでかかるバリバリのテクノっていうのは好きじゃなかったから、だからSquarepusherとかJimiTenorとか、この時期のWarpっていうのが自分にとっては面白かった。でもある人にとってはこの時期から面白くなくなったっていう人も多いと思う」
T「JimiTenorはこの後は割とジャズ寄りというか実験的な路線にいきますよね。あとSunElectricとAutechre
が同じコメントで」
R「Autechreがこの時まだ人気なかったんだよ(笑)」
T「すぐこの後ブレイクしましたからね。僕は当時の記憶で覚えているんですけど、新宿リキッドル−ムでGRIDの来日公演で前座がAutechreっていうのがあったんですよ。それでその時にAutechreがメチャクチャ良かったんですけど、メタルパーカッションみたいな音がバキバキ鳴ってて、完全にブレイクビーツだったんですけどGRID待ってる客は誰も踊ってない、3人位しか踊ってないみたいな」
R「ModeDownみたいな」
T「そういうことありました(笑) それでSunElectricの方は?」
R「これはアンビエントからの流れでTheOrbとかと一緒に聴いてた感じだね」
T「電子音を使ってゆっくり聴けるような」
R「僕はR&SっていうのはSunElectricしか聴いてないかも」
T「そうなんですか、へー。多分耐久性があるっていうか今聴いてもいいなと思えるサウンドですよね。Autechreなんかはアルバム毎の色っていうか時代の音ってあるでしょうけど。この曲に思い入れがあるとか、ちょっと出にくいタイプですよね。アルバム1枚がその音っていうか」
R「それにしてもAutechreが人気出るとは思わなかった」
T「まーそれはどうなんですかね、メディア的に盛り上げたとか。あとRadioheadのThomYorkeがいいって言ってフックアップされたとか」
R「JimiTenorの方が売れそうなサウンドなんだけどね(笑) こっちはこっちで人気が出ないっていうのがわからない。Warpの作品はここに3枚入ってるけど、それぞれ傾向が違って、この時期のWarpは面白かった」
T「ですね。あと後に一番ブレイクしたのはDaftPunk。これは聴いてすぐに面白いと思いました?」
R「そうね」
T「これのちょっと前からフランスのテクノ/ハウスっていうのが盛り上がりつつある時期に凄く決定打になるようなアルバムですよね。それで今の2007年現在フランスで作ってる若者なんかにすれば多大な影響を与えてるアルバムのようで」
R「それまでのバキバキのテクノっぽいのとも違うし、ユーモアさとか、Warpとかデトロイトっぽくない流れがここで出てきたのが新鮮だった」
T「DaftPunkはアルバムだけ聴いた時にフランスということは全然意識しないですよね」
R「でもその辺のテクノっぽくない感じが」
T「ドイツの音も聴いてるし、アメリカのアシッドも聴いてるし、イギリスのWarpのものも聴いてるしっていう色んなものが混じって出てきたんですかね。あと新譜で言うとNonPlaceUrbanField、これはBurntFriedman?」
R「そうそう」
T「この頃にAtomHeartと絡んでるんですかね?」
R「この時期はまだだろうね。Flangerはこの後だし」
T「音響テクノあるいは変体ドラムンベースとありますが」
R「エレクトロニカという言葉を書いてる時点でまだ知らないですね」
T「97年位だとまだエレクトロニカという捉え方はないですよね」
R「言葉としてはあったのかもしれないけど、まだ固まりとしてない時代っていうかもっと曖昧」
T「という感じがしますね」
R「この後すぐAutechreがブレイクする時期に意識的に使われたというか」
T「あとこの辺りから再発とか旧譜/編集盤というのがレコメンの中に入ってくるんですけど、この中だとSergeGainsbourg、PierreHenry
」
R「一応テクノ系のWarpっぽい流れもありつつ、いつもバランス的にそうなんだけど渋谷/モンド系みたいなのが入ってくると」
T「その辺も聴いてたぞっていう。SergeGainsbourgの中でこのアルバムを選んだ理由はありますか?」
R「Gainsbourgは60年代の音源とか色々あったけど、好きなのはこの辺の70年代の作品」
T「このアルバムはポップだったイメージがありますね。あとPierreHenry、これもこの頃再発が出てリミックス盤とかも出たんですよね。FatboySlim
とかがリミックスして流行ってました。それでこの時のサウンドのトレンドとしてブレイクビーツと電子音というのは流行としてあったんじゃないかなと。あとArmandoTrovajoli
」
R「まずこの時期の前からサバービアブームというのがあって、そのイタリアのサントラとかがもの凄い出てたんですよね」
T「その中で敢えてこれが好きだったというのは?」
R「これは中でも人気ある人というか"SessoMatto"とか"黄金の7人
"をやった人で、その辺は一通り聴いてたんですよ」
T「映画のサントラっていうのはずっと聴いてたんですか?」
R「90年代のDJ文化になってから色々再発とか出るようになったんですね。その流れで聴いてみたのがきっかけで、映画が好きで映画のサントラを聴くっていうのではない聴き方、この辺のは日本で殆ど公開してないものばかりだし、映画音楽として聴いてるわけじゃなくてDJネタとして皆聴いてる状況の中でCDが再発されて、レアな音源を色々聴けるようになったと」
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T「前からのサバービア系の流れというかDimitriFromParis、これのコメントに関しては突っ込みたいところなんですけど(笑) この時期にサントラ的なものとブレイクビーツを足したら面白いんじゃないかというのはアライさんも考えてたところだと思うんですけど、それを意識的にオシャレなイメージで出したのがこれですかね。この人も元々のバックボーンとしてHipHopがあるとか今はディスコDJの大家みたいになってますけど」
R「これ以降まともなアルバムは出してない、殆どDJミックスばっかりだよね」
T「最初にここで一つのイメージを作ったというのはありますよね。フランスとイギリスの違うエリアである意味似てることやってるかなっていうのがLukeVibert」
R「LukeVibertはオシャレではないけどね」
T「でも聴感上近い制作手法というかビートを打ってサンプルを配してという作り方としては意外と近い感じはありそうな気はしますね」
R「う〜ん、LukeVibertはダウンビートだったし、もっとアブストラクトだよね。僕としてはDimitriとLukeVibertを両方載せてるのがポイント」
T「で、これはMo'Waxからの作品なんですけど、Mo'Waxはどうなんですか?」
R「ドラッギー過ぎてあまり好きな作品はなかったです」
T「結構Headzっていうタイトルのコンピは流行ましたよね」
R「ケム過ぎるのはダメなんですよ」
T「スモーキーなものが? どっちかというとドープじゃないですけど飛んだ感じの音楽性というよりかはヤバイみたいな感覚だけ終わってるものは聴き飽きちゃうみたいな。素面で音だけ聴いて飛べる感じじゃないものはピンとこない」
R「Dimitriとか聴いてるくらいだからね」
T「(笑) どちらかというと音楽的要素が強いものの方が好きだったっていう。それでそれに近い部分かもしれないですけどHowieB、この人もMo'Wax周辺にいたり自分でもPussyFoot
っていうレーベルをやったり、あとこの人Skylab
というのをやってましたね。それでこのアルバムも凄くブレイクビーツというよりかは音楽的に幅が広い気がしますよね」
R「その辺が面白かったということで」
T「それでこの時にPremierのリミックスとかあって結構面白かったです」
T「RoniSize/Reprazent、この時期にアライさんは他のドラムンベースって聴いてたんですかね?」
R「まだSquarepusherくらいでしょうね」
T「となるとドラムンベースのフィールドのアルバムっていう意味では聴き込んだのは珍しいということで。今までのプログラミングでやってきたドラムンベースに比べてRoniSizeの方はもう少し肉体性がありますよね」
R「この時来日してLIVEも話題でしたね」
T「僕は昔の新宿リッキッドルームでLIVEを見たんですけどね、メンバー4人が黒いフードを被ってオドロオドロしい感じのSEで登場して、呪術をかけるようなパフォーマンスをして、これから始まるぞっていう勢いでLIVE始まってMCとかボーカルが出てきたら、あとはもうイケイケでドッカンドッカンみたいな」
R「ドラマーがいたんだよね?」
T「ドラムとベースもいましたかね、確か。シンセの上モノをReprazentのメンバーが弾いて、ビートは同期しつつ、生でアクセントをつけるみたいな感じだったと思いますよ。かなりモッシュ状態な感じで盛り上げてましたよ。それで何故かYMOからのサンプリングがありと」
R「知ってた? '君に、胸キュン。'が入ってる"浮気なぼくら"っていうアルバムの'LotusLove'という曲のイントロを何故か使ってて」
T「ということはRoniSizeがブリストルで'君に、胸キュン。'を聴いたと(笑)」
R「初期の'ComputerGame'とかだったら海外のDJがよくかけるから、その辺だったらわかるんだけど」
T「AfrikaBambaataaとかMantoronix
とか」
R「そういうんだったらわかるんだけど、この曲どこで手に入れたのかなっていう」
T「或いは"BGM"とか"TechoDelic
"でもなくて"浮気なぼくら"をブリストルの暗い空の下で(笑)」
R「しかもネタ的にこれじゃなくてもっていう入れ方で。イントロのシンセをちょっと使ってるだけだけど」
T「そんなRoniSizeがTalkin'Loud、GillesPeterson
のレーベルから出たっていうのも、それまでテクノ寄りというか打ち込み感の強いシーンの中で少しジャズっぽい感じで、ジャズの人とドラムンが近いとこにいた印象があるんですけどね」
R「だから最初ドラムンベースってジャングルからの流れでロールとか連打するような、そういうタイプがドラムンだと思ってたけど、RoniSizeはそういうのじゃないから、こういうのもドラムンなんだみたいな」
T「ちょっと新しかったですよね。SenorCoconutとLisaCarbon
、RatherInteresting
からですけど、この時点でSenorCoconutがスタートしていると」
R「まさか10年も続くとはね」
T「これもAtomHeartが色んな事をやってる中の1つの企画で」
R「この時はあくまでもそんな感じでしたけど、この後チリに移住してしまうし」
T「この頃はまだカヴァーっていう感じでもなくて、デジタル環境でラテンをやってみましたっていう感じで」
R「高速ブレイクビーツみたいなのとラテンのグルーヴを合わせましたっていうのが面白かったということで、これ1枚で終わると思ったんだけどね(笑) シリーズ化するとは思わなかった。殆どメインの活動になってますからね」
T「Atomheartっていうキャラクターが元々どういうことをやっていたかなんて知らない人が多いでしょうね。LisaCarbonもラウンジっぽい音でしたかね」
R「一応ムーグをフィーチャーしてる感じで、この辺はモンドとかラウンジとかが流行ってた時代背景もあるかと思うけど、そういうアプローチだよね」
T「それからFutureSoundOfParis、これに参加してるメンツも最近のフランスのエレクトロ/ハウスシーンで活躍してる人の元のユニットなんかが入ってたりとかが多いですね。この時期のフレンチハウスの基本的なキャラクターになってるようなフィルターがかかった音だったりとか、そういうとこはもう網羅してますね」
R「フィルターハウスって言われてたね」
T「このコンピだとまだ音楽性はトリップホップっぽい人がいたり、ドラムンベースっぽいことをやってる人がいたり、今みたいにハウス一直線みたいな感じより幅があったイメージがありますね」
R「その辺のバランスが面白くて興味ありました」
T「DaftPunk、Motorbass
、Cassius
など以降のテクノ・ハウスシーンの盛り上がりの初期ですよね。それから原田知世
、この頃のToreJohansson
の特徴だとヴィンテージサウンドみたいなところですよね」
R「タンバリンスタジオで。それでこの前にCardigansがヒットして、日本のアーティストもやるようになるわけだけど、何故か原田知世がやるっていう」
T「アライさんの世代だと80年代からアイドルで知ってると思うんですけど、そういう人がいきなりカラッとしたサウンドをやるっていう」
R「この場合面白いのは原田知世は曲を作らないので他のアーティストみたいにアレンジ・録音だけやるっていう形ではなく作曲も含めたプロデュースっていうことで歌詞と歌以外は全部やってるっていうことだから殆ど洋楽、ToreJohanssonのアルバムみたいなもんですよね、はっきり言えば。それでその状態だったらボーカルは誰でも良かったのかもしれないけど、いわゆるシンガーソングライター的なミュージシャンではなくて、女優でもある半ミュージシャン的な人がやったというのが逆に良かったんじゃないかと」
T「相性が非常に良かったと。マッチングの面白さですね。そしてRogerNichols、これもいわゆるソフトロック名盤ですよね。割とこういうものが聴きたくなるタイミングっていうのがあるんですかね」
R「タイミングっていうか90年代前半からサバービア/渋谷系みたいな流れがあって、その頃からこの盤は有名でCDも出てたけど、この時はボーナスを加えてcomplete盤として出たと」
T「このレコメンの中のバランスとして前半は今っぽい新譜のダンスミュージック、一方こういうポップス名盤というのが抑えられてる内の1枚ということで」
R「RoniSizeも入れるけどRogerNicholsも入れると」
T「その聴き方が90年代の空気だったっていう」
R「勿論。だからRogerNicholsは音源は古いけど、この時代に聴かれてたものってことで、その辺のニュアンスっていうのが今伝わらないかもしれないけど」
T「そういう意味ではこの90年代半ばっていうのは幅広くとらわれずに聴けてた時代ということもあるかもしれませんね。そしてコンポーザーシリーズ、PieroPiccioni」
R「そのイタリア系の人は何人かいるんですよ。それでここに挙げてるのはサントラじゃなくてコンピなんですよ」
T「色んな映画のサントラからいい曲だけを集めたような」
R「そういうのが何種類かコンパイルされてて、その内の1つなんだけど、ジャケ含めて日本企画盤ですね」
T「そういう編集感覚みたいなのも、この時代っぽい感じではありますね。それまでこういうサントラみたいなのが聴かれるっていう状況はそうそうなかった流れかもしれませんね」
R「あと昔でいうイージーリスニング、一番ベタなものだとPaulMauriatとか、そういうオヤジしか聴いてなかった、その系統のさらにマニアックなイタリアものとかに焦点が当ったっていう」
T「90年代以前にはなかなかそういう聴き方っていうのはなかったかなっていう」
R「なかったし、実際に聴こうとしたら本物のアナログを探さないといけない」
T「それを買ったとしてもサントラでどうでもいい曲も入ってればオイシイ曲もあって。そういうのってLPでひっくり返してチマチマ聴くより、いい曲ばかり集めたCDで聴く」
R「DJ的な聴き方っていうか。今まではロック・ポップスの名盤みたいなのしか洋楽文化的には聴いてこなかったところを例えばイタリアB級映画のサントラを聴くっていう事自体がなかったわけだから、そのスイッチの入り方が」
T「今思えばそういう97年を現すことですね。そしてNoNewYork、BrianEno
。この時期の再発はかなり早かったですね。2000年代に入ってからのSoulJazz
とかZE
のコンピとかの流れより」
R「この時の復刻は日本企画だったかな、確か。当時これニューウエイヴ時代は有名だったけど、何故かCD化されてなくて」
T「この時期の聴かれ方としてはSonicYouthとかを好きな人がルーツ的なものとして聴いてた感じですかね」
R「まだ80'sリバイバル、NWリバイバルみたいなのもなかったし、オヤジ向けだよね(笑)」
T「リアルタイムで好きだった人がやっとCDで聴けるぞ的な」
R「この時はどっちかというとそんな感じだよね」
T「タイミング的には5年後とかの方がジャストだったかなと。この時はこのサウンドがトレンドって感じでもなかったですよね?」
R「これはある種の極北っていうか、全然流行というものでもない」
T「BrianEnoも音にはタッチしてないですよね。これらのバンドを集めてきてパッケージして」
R「監修っていうか後見人っていうか」
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T「またAphexTwinで始まってますね、これはシングルですよね」
R「これはPVが話題になったけど、僕の中のAphexはここで終わってるね。これ以降はやってること変わってないっていうか」
T「一つにはドタバタのドリルンベース、あとは静かなちょろちょろっと作った電子音楽みたいな、手癖で作ったような」
R「でもちょろちょろっと作った割には音の説得力があって、それが天才と言われるところかなと」
T「あとはまた続けて登場、Squarepusher(笑)」
R「Squarepusherもここまでかな」
T「その後の流れは聴いてはいるんですか?」
R「たまに試聴する以外は殆ど聴いてないですね、やってることは変わらないし」
T「でもやり続けてるっていうか、このレコメンにも10年後に再登場みたいな、それは凄いですよね。ブレないというか」
R「ブレないねー(笑)」
T「それで売れ筋にも走らずに、バンドと一緒に作るとか、ディスコになるとか4つ打ちやるとか」
R「そこは凄い共感出来るけどね」
T「ある意味で流行ものによらないというか」
R「ドラムンベースどうのこうのというよりはSquarepusherというアーティスト魂に惹かれる感じで」
T「Photek、先程RoniSizeも出ましたがPhotekもかなり異色なドラムンベースでしたよね、ここのレコメンにも共通しますけどヨーロピアンでダークで(笑)っていうキーワードにはかなり当てはまる作品ですね。音数は少なくてアゲアゲではないですよね」
R「アゲアゲでもないし、メロディアスでもないし、ドリルンって感じでもないから速くもないしクールっていうか。それでこのアルバムの後に時代劇のモチーフを使ったPVが」
T「ありましたよね。二天一流ですか」
R「あれはちょっと違和感があったけど」
T「この時期のドラムンベースのトレンドだとRoniSizeのジャズっぽいものか、アンダーグラウンドだとネタものを使ったJorkerとかUrbanTakeoverっていうレーベルとか大ネタをバカっぽく使うドラムンベースがあって」
R「その後のビッグビートに繋がるような?」
T「時期的にビッグビートとも横の繋がりとしてはありますよね。そういう意味ではPhotekは独特の立ち位置にあって。それからLukeSlater、このレコメンの中でストレートなテクノアーティストのアルバムが入ってくるっていうのは珍しいんですけど、これはバリバリのテクノをやってる時期からすると少しクロスオーバーしてきたものですかね」
R「その辺で僕が引っ掛かったんだと思う」
T「この時期のテクノはミニマルになって行き着くとこまで行くか幅を持たせるかっていうところだったんでしょうかね」
R「LukeSlaterのその後っていうのは知らないんだけど、この頃のサウンドは引っ掛かったっていう」
T「それからStereolab、Tortoise
のJohnMcEntire
とかMouseOnMars
の人と絡んで音響的なアプローチをしたわけですけど、もっと前はハンマービートだったりNeu!
みたいなものに強く影響受けたものとか、Jean-Jacques Perrey
に影響を受けたようなムーグを使ったもの、そういうものから」
R「ちょっと洗練させたという、単にネタ的なアイディアで終わらないというか」
T「これの前の"EmperorTomatoKetchup"ってアルバムでJohnMcEntireと絡んで」
R「それを経て、さらに密になって。これが出来る過程みたいなことも重要だったけど、曲の良さ、内容の良さもあるので今聴いてもいいものっていうか」
T「ずっと聴き続けられるマスターピースというか」
R「90年代の名盤ってなかなか選ぶのは難しいけど、これは結構選べる1枚だと思いますよ。実際にこれ色んなジャンルの人が聴いてたし」
T「それでこのアルバムの影響っていうのが普通のロックバンドの人が音響系とか色んな音楽を聴くきっかけになりましたね」
R「ロック系の人も聴いてたし、音響系好きな人も聴いてたし、クロスオーバーな聴かれ方っていうか。そしてそのStereolabの大本じゃないけど」
T「SilverApples(笑)、割とロックバンドにムーグとかアナログシンセが乗るっていうのがトレンドみたいなとこはありましたね」
R「それをだから昔にやってる人達がいたっていう」
T「ルーツってことですよね」
R「当時ロックバンドにシンセが入るパターンとしてプレグレ系とかで結構あったんだけど、そういうジャーマンプログレみたいな感じでもなかったし、割とやり方として90年代の音響系に近かったというか。時代は違うけどStereolabと違和感なく聴けるというか」
T「そしてBurtBacharach、作曲家シリーズですね」
R「これは王道ですね。今まではイタリアの一般的にはマイナーな人を挙げてたんですけど、BurtBacharachに関しては超有名ですよね」
T「日本で普通に耳馴染みの曲が多いですよね」
R「一般の普通の大人が知ってるレベルだから」
T「スーパーとか喫茶店でかかってるものをまともにまとめて聴くことで意外な発見が」
R「イージーリスニングとかイタリアものを聴く耳でBurtBacharachもスーパーのBGMじゃない耳で聴くっていう。その感覚がわからないとスーパーのBGMにしか聴こえないかもしれない。スタンダードっていうか基本を聴くっていうことも兼ねるけど」
T「なかなかアライさんのサウンドからはパッと連想し辛い音楽的要素の1つですね。それで同じような流れでPieroUmilianiとEnnioMorricone
」
R「Umilianiのはこういう時代でなければCDが出なかったような類いの人、でも実はグルーヴィーなサウンドとかがあるんですよね。レアグルーヴっていうとソウルとかファンクとかを想像するかもしれないけど実はこういうとこにも使えるネタもあるし。MorriconeはBacharachと並ぶくらい有名な人でニュー・シネマ・パラダイスとか如何にもな映画音楽の巨匠であるわけだけど、6~70年代は変わったサウンドもやってて、90年代的視点で聴くとマニアックっていうかオシャレなサウンドをやってて、その時期の音源がコンパイルされたと」
T「そういうコンポーザー的なものを今の耳で聴き直す聴き方があった時期ですよね」
R「音楽でも変わった音楽、オルタナティヴなものっていうのは色々あるんだけど、例えばMorriconeっていう有名な人でも時代によってはそういうこともやってるし」
T「それからPortisheadのセカンド、そしてラストアルバム」
R「最新アルバム」
T「ファーストよりさらにダークでゴシックな。ファーストはまだジャケも紺色で暗いながらも色がついてましたが、これはもうとうとうモノクロの世界にいってしまったと。ファーストを好きだった人には期待した通りの世界観がきてくれたって感じでしたかね、裏切らないというか」
R「僕としては裏切られなかったけど、世の中的には暗過ぎてついていけない、とっつきにくいみたいな。ファーストはまだ新しさとかそういう面で聴いてた人もいるだろうけど、セカンドはホントに好きな奴じゃないとハマってないっていうか。セカンドにハマった人が真のファン。ただ、暗いって言っても色々あってゴシック的な暗さとは僕は違うと思ってて、ゴシック系はそれはそれとして他にあるんだけど、そういうのは好きじゃないから。暗さのニュアンスを伝えるのは難しいんだけど、ホントに陰湿でイヤだなという感じでもないし」
T「微妙に今っぽい感覚っていうか」
R「サウンド的にはサンプリングとかスクラッチとかそういう要素も入ってる訳だし。退廃的な音楽って色々あると思うんだけど、ゴシック的、ヘビメタ的、MarilynMansonとかそういうのは色々あると思うんだけど、そういうんじゃないんですよね」
T「それこそDavidLynchのTwinPeaks
的な世界というか」
R「クールとダークが一緒になってるような」
T「暗いんだけど、その暗闇の中にいるのが気持ちいいみたいな」
R「う〜ん、それで幽霊は出てこないみたいな。ホラーではないし、誰か殺されるわけでもないし。歌詞とか英語だからよくわからないけど、多分演歌なんだよね、ブリストル演歌。誤解を招く例えを言うと中島みゆきにHipHopが混ざったみたいな」
T「それは凄いですね。山崎ハコとか森田童子
とか、それにDJカルチャーが(笑)」
R「ああいうアコースティックでフォークで暗い感じでビートのプロダクションとかが今っぽい。それが結構ハマるっていうか」
T「歌詞がよくわからないっていうとこもいいんでしょうね」
R「だから外人が聴くとウジウジしたことを歌ってるなっていう感じだと思うけど」
T「日本人だとBethGibbonsのボーカルは音として聴いてしまう」
R「ファーストも勿論好きなんだけど、セカンドの方が好きだね」
T「より世界観が濃くなったというか」
R「DavidLynch的な美意識といったら一番わかりやすいかもしれないけど」
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