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2004年のお蔵入りインタビュー

2004年に行われたお蔵入りのインタビューを当時掲載される予定だった雑誌「RECORDer」の岸田浩章( @PrecordeAr )さんより承諾をいただきましたので、ここに掲載いたします。
時期的には”Rough Machine“のリリース前です。

roland_sh101 casio_rz1
●僕はもともとテクノを聴いていたんで、最初アライさんのイメージってアンビエント・テクノだったんですけど、それが今みたいにブレイクビーツを前面に出したのは?

リョウアライ(以下R):あの時に流行ったテクノってありますよね? あれがあんま好きじゃなくて。それでシンセとかで音楽を作ってたんで、それでリスニング系というかアンビエントとかそういうふうになったんですけど。あんまりテクノを作る気がなくて、だからといってアンビエントをずっと作る気もなく、前からサンプラーは持ってたんでサンプル中心になったと。まあ、シンセを買ってドラムの音が入っていても、その音だけで作るのは限界があると。サンプルしちゃえば音色が無限大に使える。だから、サンプリングでビートを作って、上ものどうするって話になったとき、シンセを入れるとダサいんですよ、ハッキリ言って。だから質感の問題から発展たというか。

●ちなみにヒップホップはそんなには聴かなかったんですか?

R:まあ、グランド・マスター・フラッシュ、RUN DMCから始まって、部分的には聴いてるんですけど。

●そんなにはマニアックに聴いてないと。

R:だからサンプリング=ヒップホップというわけではないんですね。10代の頃からサンプリング・ミュージックに触れてましたけど。

●それはアート・オブ・ノイズとか?

R:そうそう。リアルタイムで聴いてた。

●最初、アライさんが作った音楽は?

R:20年くらい前にシンセを多重録音して。まだ、その時代はサンプラーは買えないんですよ、高いから。まだシーケンサーがなくて、手弾きで音を重ねていく。ドラムも手でやったりしてて。

●手でやる?

R:要するにシンセでノイズみたいな音を作ると、ドラムみたいな音になることを発見するんですよ。♪ドッパッドドパ。そういうのをまず入れて、次に違う音を作って重ねて。その次に違う音を作って重ねて、という感じで。まだMIDIってやつがなかったんですよ。同期が出来ないんで。その後シーケンサーとかドラムマシンを買って行くんですけど。まあ、音楽はどっちみちやりたかったんで、学校でバンドをやるんですけど。

●あっ、それでドラムを始めたんですか?

R:そうそう。それは純粋にギターかベースかドラムやるかって話になったとき、じゃあドラムをやるかと。YMOもアート・オブ・ノイズも聴いてて、ビートにいかれてたんで(笑)。もうYMOとか聴いてこんな感じだったんですよ。(ドラムを叩く真似をしながら)体がもうこうなってたというか。

●ハハハハ。

R:まあ、当時バンドブームだったんで、頑張ってやればデビ
ューできるんじゃないかと。

●でもバンドをやりながら、宅録の方はどうしてたんですか?

R:続けてましたね、一応。

●その頃はどういう音楽だったんですか?

R:もう、それはエレクトロ(笑)。その頃にはカシオのRZ-1ってドラムマシンにキックとかスネアの他に、4つのサンプルのパッドが付いてたんですね。それを買ってサンプリングしたのが最初。

●最初にサンプリングしたのは?

R:そりゃあ、もうYMOとかそういうやつで。秒数0.5とかそういう世界で。だからスネアぐらいですよ。もう(今みたいな)ビートものは作ってたんですよ。その時に作ってたのと、90年代のテクノのビートとギャップがあったわけです。だからデトロイト・テクノとかそういうのには入れなかったんです。でも、そのうち、ちゃんと自分で音楽やろうと思って、フロッグマンのコンピに参加したのが、自分名義の最初の音源。

●でも、最初にフロッグマンのヤツ聴いたとき、リスニングもの聴いてた人かと。

R:またテクノが来てるよっていうんで、オーブとか聴き始めて。エイフェックスやワゴン・クライストとかも聴いてましたけど、最初、ああいうチープなのはわからなくて。むしろオーブみたいな方が、音の奥行きが広い感じがしたんですよ。

●アライさんは『Mind Edit』というアルバムを作って、エディットという概念を出してきたわけじゃないですか。それまではシンセによる構築から、編集という概念を持ち出してきたというか。

R:やっぱり、イチから作っていくと堅苦しい音楽になっちゃうんですよね。それまでの音を突き詰めると、映画音楽や女子十二楽坊みたいになってしまうんですよ(笑)。まあ、そっち路線でやっていくならいいんだろうけど、僕はそうじゃなかったから、3枚目以降は好きにやろうって感じで“マインド”って言葉が出てきたんですよ。

●それは聴いた人の心まで編集したいと?

R:どっちかというと作ってる自分に対してですが。

●その感覚は新作の『Rough Machine』にも続いてるんですか?

R:そうですね。自分がそれそのものになりたいんですよ。

●新作聴いて改めて思ったのは、今のアライさんのやってることを定義づけると「ビート・ミュージック」になのかなと。

R:Beat Bracelet』(01年に発表した4thアルバム)という言葉はそれから来てます。エレクトロニカでもヒップホップでもブレイクビーツでもない……まあ、全部好きなんですが。だからメロディに対してのビートなんですね。ビートがメロディになりうるという。音楽の三大要素というと、メロディとハーモニーとリズムですよね。この構造を崩してるわけです(笑)。だからといって、突然ノイズみたいなのをやるわけでもない。

●ライブではスクラッチもするし(笑)。

R:まあ、あれはCDJだから誰でも出来るんですよ。曲をかけてる間やることないから、じゃあ、やろうかと。でも、僕があと10歳若かったら、ターンテーブリストを目指してたと思うんですよ。さすがに30代の今からでは無理ですが(笑)。

●ライブをCDJでやるのはなぜなんですか?

R:自分の中ではロック・バンドがアルバムを出して、ツアーに出て演奏して曲を再現するという方法と同じなんですけど、要するにライブに適した機材というのがないんですね。サンプラーだと次々と再生できない。1曲終わったら、再びデータを読み込んで、って感じだから。最初はDATとか使ってたんだけど、CD-Rが焼けるようになったら、自分の曲しかかけないDJみたいな感じでやってます。あとからエレクトロニカ系で、ラップトップ使う人は出てきたんだけど、PowerBookはトラブルがあるし、CDだと一番音圧が高いんでベストだと。ライブの機材がどうのこうのじゃなくて、音さえ鳴らしてしまえば、踊ってしまうというか。だから、その音の再生装置がCDJかラップトップかハードディスク・レコーダーかの違いだけですよ。あとはハイファナみたいにパフォーマンスとして、サンプラーを生で叩くというのはありますけど。

●そういう方向ではやらないんですか?

R:やったことはあるんですけど、マニュアルでやればどうしてもずれるし、それが別にいいと思わないんですよ。打ち込みのスクエアな感じが基本的に大事なんで。もともと手で作ってないものを手でやればいいというのも納得がいかないというか。あとは曲の内容ですね。ブレイクビーツというと、もっと淡々としていて、ループが基本なんだけど、僕はもうちょっと曲として展開しちゃうから。

●なるほど。

R:結局、世界各国のストリートで出てきた音楽と同じ、というのは自覚してますね。音楽について、アカデミックな教育も受けてなくて出たのがヒップホップだったり、デトロイト・テクノだろうし、エイフェックスはエイフェックスで作ってた。僕のような音楽もそれと一緒なんですよ。ただ、海外でそういうのがあって、影響されて作ったというのがないんですね。情報をシャットアウトしてたワケでもないんだけど、僕は僕でやってた。結構ぐちゃぐちゃになってるんです。

●そういう点と線がつながってない感じが、アライさんにある気がするんです。

R:例えばエレクトロニカの人はヒップホップって言うし、ヒップホップの人はエレクトロニカと言うんですよ。基本的にそういう構造がありますね。

●どっちつかずですね。

R:そうやって、どっちでもないと言われるのは肯定的に取ってますね。自分の音楽作ってるんだから当たり前ですが。とにかく違和感があるんですよ。デトロイトがあってワープがあって、90年代にテクノが出てきて。ヒップホップというカルチャーがあって、服装から何から真似して、当たり前にやるというのには。いろんなものを聴いて、自分なりにスタイルを突き詰めていきたいんですよ。