去年の冬に胡蝶蘭を枯らしてしまって、今年こそはと身構えている方は多いと思います。
暖房をつけていたのに、どうして、という気持ちもよく分かります。
こんにちは、蒼井奏です。
胡蝶蘭を枯らす人がいちばん増えるのは冬で、しかも原因の多くは昼ではなく夜にあります。
この記事では、夜の冷え込みから株を守る方法と、冬だけ変える水やりのやり方をまとめました。
守りたい温度と、あえて下げたい温度。
その両方が分かると、冬はぐっと怖くなくなります。
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冬に弱るのは、寒さそのものより「夜の落差」です
胡蝶蘭には、寒さをしのぐ仕組みがありません
日本洋蘭農業協同組合のファレノプシス(胡蝶蘭)の解説によると、胡蝶蘭は東南アジアから北部オーストラリアの亜熱帯から熱帯に分布する植物です。
一年を通して気温が下がらない場所で育ってきたので、寒さをやり過ごす仕組みをそもそも持っていません。
落葉して休むこともできませんし、球根に力をためておくこともできないわけです。
だから日本の冬では、こちらが環境を用意してあげるしかありません。
世界らん展のファレノプシスの育て方でも、温度で注意しなければならないのは冬の間の低温だと明記されています。
部屋は暖かいのに、窓際だけ別世界
昼間に20℃あったリビングでも、暖房を切った深夜には10℃を下回ることがあります。
とくに窓のそばは、ガラス越しに外の冷たさが伝わってきて、部屋の中央より確実に冷えます。
うちは南向きの窓辺が胡蝶蘭の特等席なのですが、真冬の朝に温度計を見比べると、部屋の中央より3℃ほど低い日がありました。
日当たりを優先して窓際に置きっぱなしにすると、株は毎晩8時間から10時間、冷たい場所に立たされ続けることになります。
冬に調子を崩すのは、たいていこの時間帯です。
10℃を下回った株の中で起きていること
低温にさらされると、まず落ちるのは根が水を吸い上げる力です。
根が止まっているのに葉からは水分が抜けていくので、葉がしぼんでしわが寄ってきます。
見た目が水切れとそっくりなので、あわてて水をやってしまう人が多いのですが、吸われない水が鉢に残れば今度は根腐れに向かいます。
冬の「葉がしなびた」は、水不足ではなく寒さの合図であることが少なくありません。
まず温度計を見る。
水はそのあとです。
守りたい温度と、あえて下げたい温度があります
最低ラインは10℃、安心できるのは15℃以上
冬越しの目安としてよく言われるのが、10℃を下回らせないこと、できれば15℃以上を保つことです。
米国蘭協会(American Orchid Society)のPhalaenopsis Culture Sheetでも、夜間は60°F(およそ16℃)より上、昼間は75〜85°F(およそ24〜29℃)を通常の範囲としています。
5℃近くまで落ちると、葉や根が傷んで株ごと枯れることもあります。
涼しい夜が、花芽のスイッチを入れます
ここが冬の管理でいちばん誤解されやすいところだと思います。
胡蝶蘭は、涼しさを感じないと花芽を作りません。
生産者向けに書かれた森田洋蘭園の開花調節の解説では、25℃以上が長く続くと葉ばかり育つ栄養成長になり、25℃以下が続くと生殖成長(花芽分化)に向かうと説明されています。
先ほどの米国蘭協会の解説も、秋に夜温が55°F(およそ13℃)まで下がる日が数週間あることが、花茎を出させるうえで望ましいとしています。
秋から初冬のひんやりした夜は、敵ではなく合図なんです。
暖めすぎると、元気なのに咲きません
これを知らずに、11月から寝室のエアコンを一日中つけっぱなしにした年があります。
株は元気なまま冬を越したのに、春になっても花茎が1本も出てきませんでした。
葉だけが立派に増えていくのを見ながら、暖かくしすぎたのだと気づいたのはずいぶんあとのことです。
時期ごとの温度の目安を、表にしておきます。
| 時期 | 昼の目安 | 夜の目安 | この時期にやりたいこと |
|---|---|---|---|
| 9月〜11月 | 20〜25℃ | 15〜18℃ | 涼しい夜で花芽のスイッチを入れる |
| 12月〜2月 | 18〜25℃ | 15℃以上(最低10℃) | 花茎を伸ばしながら株を守る |
| つぼみがふくらんだ後 | 18〜25℃ | 15〜18℃ | 温度を振らさず、そっとしておく |
つぼみがついてからの急な温度変化は、開かないまま落ちる原因になります。
涼しくするのは秋、安定させるのは冬。
この順番だけ押さえておけば、迷わずに済みます。
マンションでできる、夜だけの寒さ対策
夜は窓から1メートル離すだけで変わります
いちばん効くのに、いちばんお金がかからない方法です。
朝は窓辺に戻して日光を当て、寝る前に部屋の内側へ移す。
これだけで、株が一晩に経験する最低温度が変わります。
うちでは軽いキャスター付きの台に鉢を載せて、押して動かせるようにしました。
毎晩持ち上げる前提だと、正直、三日で続かなくなります。
鉢は床から浮かせておく
冷たい空気は下にたまるので、床置きは思っているより寒い場所です。
台やスツールに載せて、床から40センチほど上げるだけでも違います。
フローリングに直接置いていた鉢を棚に上げたら、鉢の中の乾きも早くなって、根腐れの心配がぐっと減りました。
暖房の風は当てない、でも空気は止めない
エアコンの温風が直接当たると、葉と根から水分が一気に飛びます。
かといって締め切って空気がよどむのも、蘭にはよくありません。
日本洋蘭農業協同組合も、風通しのよい場所を好む植物だと説明しています。
サーキュレーターは壁や天井に向けて回し、株のまわりの空気がゆるく動く状態を作るのが安全です。
株に風を送るのではなく、部屋の空気ごと動かすイメージでいます。
夜の対策として、わが家で続けているのはこのあたりです。
- 寝る前に、鉢を窓から1メートルほど内側へ動かす
- 遮光カーテンを閉めるとき、窓とカーテンのあいだに鉢を残さない
- 冷え込む予報の夜は、鉢と株全体に不織布や紙袋をふわりとかぶせる
- 暖房を切って寝る部屋には置かない
紙袋をかぶせる方法は手軽ですが、朝に外し忘れると光が足りなくなります。
かぶせた日は、スマホにアラームを入れるようにしています。
冬の水やりは、量ではなく間隔と時間帯を変えます
間隔は10日から2週間に1回まで空きます
冬は株の動きがゆっくりになり、鉢の中もなかなか乾きません。
日本洋蘭農業協同組合の解説でも、水は植え込み材料がしっかり乾くまで与えないのが基本で、秋から春は鉢から水があふれない程度の量とされています。
夏に週1回のペースだったものが、冬は10日から2週間に1回になることもあります。
カレンダーで決めず、水苔を指で押して確かめてください。
奥まで乾いていたら与える、湿り気が残っていたら見送る。
水やりの前に、わが家では次の点を見ています。
- 水苔を指の第一関節まで押し込んで、奥まで乾いているか
- 鉢を持ち上げたとき、はっきり軽くなっているか
- 透明鉢なら、内側に水滴がついていないか
- これから数日、夜の気温が10℃を下回らない見込みか
ひとつでも引っかかったら、その日は見送って構いません。
冬に水を切らして枯れた株より、与えすぎて根を傷めた株のほうを、私はずっと多く見てきました。
与えるなら、晴れた日の午前中に
夕方や夜に水をやると、濡れたまま夜の冷え込みに入ってしまいます。
米国蘭協会の解説も、葉が乾くように朝のうちに水をやること、株元に水をためないことを勧めています。
冷たい水は根の負担になるので、真冬は室温に戻した水かぬるま湯を使っています。
受け皿にたまった水は、そのつど必ず捨ててください。
冬に残った水は蒸発せず、夜のあいだ根を冷やし続けます。
乾燥対策は、葉水より部屋の湿度で
暖房の効いた部屋は、思っている以上に乾いています。
葉に霧吹きをするのも悪くないのですが、夕方以降にやると水滴が残ったまま冷えてしまう。
加湿器で部屋全体を50〜60%に保つほうが、株にも自分の喉にも効きます。
冬に出やすいサインと、その日のうちにできること
葉がしなびたら、水より先に温度を疑う
水切れと低温は、葉の見た目がほとんど同じです。
夜の最低温度を測っていないなら、株の横に温度計を置いて一晩過ごしてみてください。
翌朝の数字が10℃を下回っていたら、水を足すのではなく置き場所を変えるのが先です。
つぼみが落ちるのは、温度が振れたとき
米国蘭協会は、開く直前のつぼみは温度の変動で落ちやすいと注意しています。
玄関に移した、窓を開けて換気した、暖房を止めて出かけた。
つぼみがふくらんできたら、動かさず環境を変えないのがいちばん無難です。
花が終わった株は、無理をさせずに春へつなぐ
花が終わったあと、花茎を根元から切れば、株は休みながら力をためられます。
節を残して切ると二度咲きを狙えますが、体力を使う冬に無理をさせるのはおすすめしません。
うちでは、葉が4枚以上あって厚みも残っている株だけ二度咲きを狙い、そうでなければ根元から切って春を待つようにしています。
まとめ
冬の胡蝶蘭でつまずくポイントは、だいたい夜に集まっています。
昼の日当たりばかり気にして窓際に置きっぱなしにすると、気づかないうちに10℃を切った夜を何度も過ごさせてしまう。
一方で、心配のあまり暖めすぎると、今度は花芽のスイッチが入りません。
やることは、寝る前に鉢を窓から離すこと、床から浮かせること、水は午前中に間隔を空けて与えること。
この3つだけで、どれも数十秒あれば終わります。
わが家の胡蝶蘭が今も毎年咲いてくれているのは、腕がいいからではなく、夜のひと手間をやめなかったからだと思っています。
今夜、鉢を1メートル動かすところから始めてみてください。